思い出の記について

「思い出の記」は、佐藤写真館初代・佐藤多喜治が自らの人生を振り返り、故郷である気仙(けせん)地方への思いを込めて綴ったものです(昭和62年~平成元年 東海新報に掲載)。

当サイトの内容は著者本人の記憶をもとに記述されているため、実際の出来事とは一致しない部分もございますが、著者の遺志を尊重し、原文のまま掲載させて頂きました。

佐藤多喜治(さとう たきじ 1906年〈明治39年〉3月28日  - 1991年〈平成3年〉8月12日)明治39年岩手県気仙郡盛町(現在の大船渡市盛町)に生まれる。
郡役場勤務を経て大正13年上京、東京新宿・橋本写真館へ入門。
大正15年帰郷、佐藤写真館を創業する。

写真業を営む傍らで記録写真の撮影にも余念がなく、時代と共に変わりゆく故郷を撮り続けた。

著者近影
仕上室にて(昭和20年頃)

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目 次

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  • 稲子澤家の総門
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  • 芭せを(しょう)の句碑
    大正期の天神山 町民の憩の場所『天神山』に樹齢数百年の山桜の巨木の根元に芭蕉の句碑が配置されてあった。その懐か…
  • 「医療の話」
    運河を築港 荒涼としたオホーツク海と、大船渡湾より広い能取湖、海に出入りの出来ない湖を船が通れるように運河を築…
  • 思い出の発見
    ある夏の夜の思い出 カフェーが雨後のタケノコのように開店が盛んで、町には、すみれ、やよい、白菊、いろは、街のク…
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    あられまじりの朝 毎年迎える桃の節句の雛祭り。昭和8年の3月3日は忘れられない 「三陸大津波」の記念日となった…
  • 宮様の一周忌に
    昨年の早春は悲しみの春であった。誰にでも気さくで庶民的で親しみの持てる宮様がご逝去なされたからである。二月十日…
  • 気仙郡役所について
    高田と誘致合戦 大正十年、盛高等小学校第三学年。その春は高等三年は私等が最後の卒業生だった。それと同時に盛農学…
  • 私のバードウィーク
    三寒四温を繰り返しながらの暖かな春の訪れ、我々老人にとっては待ちに待った季節の到来だ。草木の芽吹きのように生気…
  • 63年ぶり私の東京
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  • 追憶私の東京
    辻の愛娘との悲しい別れは、私の修行初期に大きな衝撃を受けたが、私には一生の運命を決定づける希望の灯りが見えて来…
  • 海と山と椿と
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  • 肥田柿の思い出
    30年ばかり前に、何かの本で『肥田柿』原産地のことを読んだことを思い出した。その記事には、原産地は、「陸前越喜…
  • 銀行創立の思い出
    はなし家の枕言葉のようで現代の子供達が聞いたら、吹き出し笑ってしまうような話である。 大正の初年、小学校3年生…
  • 故・金野菊三郎先生を偲んで
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  • 楽しかった敬老会
    台風18号が小笠原諸島から北上して関東地方に接近との予報。夏以来雨降りの連続。今日も朝からそぼ降る中を地区公民…
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    お不動様に惹かれて、今年は春から五度も参詣の幸運に恵まれた。一つには 「春来る鬼」の映画撮影に好奇心を抱いての…
  • 松の木は残った
    本紙読者の熱い声援受け 連続投稿すると見る人も〝アキ″が来るから、少し休んだらどうだべ…とは我が家の家族の弁だ…
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    あちこちから柿の話が聞こえて来た。昨年は豊作だったが、今年は冷害をまともに受けて農家はがっかりしているようだ。…
  • 合足トンネル開通おめでとう
    〝合足トンネル開通おめでとう″心からお祝い申し上げます。より速く、より近くは誰でも等しく願うところだ。蛸ノ浦、…
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    今も盛六郷を碑睨 名木・洞雲寺の樅の木は樹齢600年とも、それ以上とも見える。洞雲寺ご開基以前にそこにあった木…
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  • ふるさとの文化財めぐり
    その日は冷害凶作の後遺症のような秋雨の降る日で、市教育委員会募集の〝文化財めぐり〟に参加させていただいた。昨年…
  • 憩いの場建設を
    時代の進歩は、実に目覚しい。特に、青少年の体力増進は驚くばかり。各学校ごとにグラウンドが整備され、室内競技場が…
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    八十八夜は春一番の季節、若芽の吹き出る緑は最高の景観を描き出す。 旧今泉街道を矢作川に沿って逆登ると、間もなく…
  • 常舞台の思い出をたどる
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  • 水沢・黒石の正方寺を尋ねて
    我が家の宗門、この目で 五月雨の降る六月十八日、公民館婦人部主催の日帰りミニ旅行の話は今まで再三聞いていたが、…
  • 今出山登山
    青年会講所主催の例年行事の一つに、市民の「今出山登山会」がある。六月十一日、参加募集の記事を見て、毎日裏庭に出…
  • 隠れたる名勝・あやめ二題
    梅雨の被害は北東のやませ風の影響が甚大だが、内陸地方は沿岸地域よりは悪影響はないようで、あやめの開花も十日も早…
  • 黒松の男性美・洞雲寺の古木
    岩手の樹は赤松と指定され宣伝されて、県下の名所旧跡は赤松が全盛を極めつけているようだ。松の木も女松が重要視され…
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    移り変わり多かったお宮 気仙の村社を拝巡してみて盛町の村社ほど移り変わりの多かったお宮はないのではないかと気が…
  • 60年前の一大事件の思い出
    越喜来に飛行機が墜落 小雨まじりの強い風の吹く、短い秋の日の夕方だった。突然、千葉脇三様(千葉薬店)のご来訪を…
  • 薬剤散布の功罪
    奥の細道「芭蕉の句」になんとなく親しみを感じるのは、我々老人だけであろう。笑うのは戦後の生まれで蚤(のみ)にも…
  • 定義如来と芭蕉の句碑
    連日、晴天続きの暑い真っ盛り。鉄道旅行の募集は、立秋になっても残暑はきびしいこの頃JR盛駅の企画だが、この暑さ…
  • 土すがりの逆襲
    寺の領地内に住居を持つ人は、昔は寺内の人と呼んだ。 桜場部落の住人は、ほとんど寺内の人だった。小学校もその類に…